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自衛隊は20年続いた韓国海軍との船舶遭難事故捜索・救助共同訓練を無視していた!? 映像を公開しても韓国艦船から照射されたレーダーの種類は公表せず!

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 韓国海軍の駆逐艦「広開土大王(クァンゲト・デワン)」が日本海上で、海上自衛隊のP-1哨戒機に数分間にわたり複数回、火器管制レーダーを照射していた問題は、年をまたいで、日韓間での主張の隔たりが続いている。

 防衛省は2018年12月28日に、「レーダー照射を受けた証拠」として、当時自衛隊が撮影した映像を公開した。

▲海上自衛隊のP-1哨戒機(Wikipediaより)

 一方、韓国国防部は当初から「当時漂流中だった北朝鮮漁船の探索のためにMW-08レーダーを稼動したが、射撃統制用のSTIR-180レーダーは点けてもいなかった」と発表している。

 防衛省の公開した映像を見た人が、この点を知らない場合、「韓国艦船は自衛隊機にレーダーを照射しているじゃないか。韓国は嘘を言っているじゃないか」という印象を受けるであろうと思われる。

 しかし、この映像だけでは、照射されたレーダーが「MW-08探索レーダー」なのか、対空ミサイル誘導のために照射する「STIR-180追撃レーダー」なのかは、わからない。自衛隊は、韓国艦船から受けた電磁波のデータを公開することを拒否しているからだ。

 映像公開については、公開を渋る防衛省を安倍総理が押し切ったという点でも、世論を誘導することが目的の、「政治案件」であることが明らかだ。

 この問題では2019年1月2日、韓国国防部が「動画で見られたように、韓国軍が当時、公海上で遭難漁船を救助している人道主義的な状況で、日本の哨戒機が低空威嚇飛行をした行為自体が非常に危険な行為だ」と謝罪を求める声明を発表した。

 さらに韓国国防部は1月4日、日本側の主張の問題点と韓国の主張をまとめた韓国語の映像を公開した。

▲韓国海軍の駆逐艦「広開土大王」(Wikipediaより)

 ここで、日本において政府もマスメディアも全く触れようとしない点を指摘しておかなければならない。

 今回の事件は、難破した北朝鮮の漁船の救助が発端だった。韓国側は救助にあたり、その現場に日本の自衛隊機が接近したことから問題が生じている。不思議なのは、日本側が救助に協力しようとしていないこと、その点に疑問を呈するメディアがほとんどないことだ。

 実は、日本の海上自衛隊と韓国海軍は、1999年以来20年にわたり、2年ごとに船舶遭難事故が発生した際の捜索と救助の共同訓練を行ってきた。2018年12月にも横須賀沖で、海上自衛隊の5050トン級駆逐艦、韓国海軍の4400トン級駆逐艦と4200トン級軍需支援艦が参加する訓練を行ったばかりだ。大規模な訓練の場合は、機雷敷設艦と上陸艦、海上哨戒機なども動員されている。

 これほどの訓練を重ねておきながら、今回の北朝鮮漁船の救助活動に、その成果が全く生かされていないのは不可解であり、海上自衛隊と韓国海軍との連携は一体どうなっているのかと疑問を持たざるをえない。韓国海軍側は「この訓練の趣旨と経験を無視したのは日本」だと指摘している。

 難破し、救助された北朝鮮漁船の乗員の中には、死者も出ている。海難事故をここぞとばかりに政治利用する日本政府にも、その尻馬に乗る日本のメディアにも、人道主義の片鱗すら見られないのは、日本人として残念としか言いようがない。


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